小さな子どもたちにとって、見て聴いて触れたもの、すなわち体験したものの概念が、精神を形成していきます。彼らの心と体はいつも一緒に発達しているのです。見て聴いて触れて感動した体験こそが、知性を目覚めさせ、表現意欲を高めるのです。
〈ちがって当たり前のひとりひとりの個性〉
以前、知りあいの公立小学校の図工の先生が、入学したばかりの1年生の何人かが同じような花の絵を描くと言っていたことがありました。調べてみると、同じ幼稚園出身の子どもたちでした。
入学からしばらく経つと、それぞれ違った花の描き方をするようになったらしく、たぶん、幼稚園の先生教に花の描き方を教え込まれたのではないかと図工の先生が話していました。きっと、子どもたちの指導にとても熱心な先生だったのでしょう。
同じことは他の場面でもあります。
幼稚園の発表会で、舞台に立っている木の役の子どもたちが、皆、ほとんど同じ形をしていたことがありました。アメリカンスクールや外国の子どもたちの舞台では、たとえ、木の役であっても、一人として同じ形の木を演じている子どもはいません。中には膝をついていたり、お辞儀をするような格好だったり、思い思いに工夫して演じているように見えました。
先に述べた日本の幼稚園の子どもたちも、先生に教えられた役を一生懸命演じているのにかわりはありませんが、そこに子どもたち自身の想像や創造が加われば、発表することへの喜びはなお一層増していたのではないかと思います。 表現には感動が必要です。感動して初めて、表現したいという意欲を持つことができるのです。
音楽を聴いて、その良さを感じて、イメージを膨らませて、創造する。 その自己表現は、一人一人が違っているのが当たり前で、違いがあるからこそ、その存在に価値があり、すばらしい表現も生まれてくるのです。
〈自己表現の力を育てましょう〉
外国の子供たちに比べて日本の子供たちには、自分の個性を、そのまま表現することに対して不安を感じることが多いように思います。 リトミックでは、子ども自身が感じたままに自由に表現できるように、次の力を育てます。
①音楽を聴いて、その良さを感じ取る感性と確かな音楽の力
②感動する気持ち
③想像力と創造力
④自分はこうしたいという主体性
⑤個性を認められ大切にされる体験の積み重ねによって自分に自信を持つ
⑥同時に他者を認めることができる
⑦自己表現の意欲と能力
⑧自己表現の経験の積み重ねから、さらなる想像、創造へ
どの子も、自信を持って、自分が望む世界へ羽ばたいていってほしいと思います。
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